不動産相続とは何か
不動産相続とは、所有者が亡くなった際に、その不動産が法定相続人または遺言で指定された相続人に引き継がれる制度です。
※相続の対象となる不動産には、土地、建物、マンションなどが含まれます。
相続が発生すると、相続人は被相続人(亡くなった方)の財産を承継する権利と義務を負うことになります。不動産はほとんどが相続財産の中でも一番高い資産であるため、慎重に考える必要があります。
相続の開始時期
相続の開始時期は被相続人の死亡時に開始されるのが一般的です。相続人は法律上、自動的に被相続人の権利義務を承継することになります。
相続の種類
相続には主に「法定相続」、「遺言相続」の2つがあります。
- 法定相続:民法で定められた順位と割合に従って相続が行われること。
- 遺言相続:被相続人の遺言に基づいて相続が行われること。
不動産相続の手続きの流れについて
不動産相続の手続きの流れについてご紹介します。
相続人の確認
不動産相続において、相続人の確認は重要なポイントです。
法定相続人の順位
配偶者は常に相続人となり、他の相続人と同順位で相続します。子がいる場合は子が第一順位となり、子がいない場合は次の順位の相続人が継承権を受け取ります。
相続人の役割
- 相続財産の調査と把握
- 相続税の申告と納付
- 不動産の名義変更手続き
- 相続財産の分割協議
- 債務の承継と返済
相続人は、上記の役割を理解しておくことで、円滑な相続手続きを進めることができます。
相続人不存在の場合
相続人が存在しない場合、不動産は最終的に国庫に帰属します。ただし、この前に特別縁故者による財産分与の申立てが可能です。
※特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた人や、被相続人の療養看護に努めた人などを指します。
名義変更手続き
相続不動産の名義変更は、相続人が法的に不動産の所有権を取得するための手続きです。
法務局での手続き
不動産の名義変更は、管轄の法務局で行います。
- 相続人による相続登記の申請
- 必要書類の提出
- 登記官による審査
- 登記完了証の発行
相続登記は、被相続人の死亡を知った日から3年以内に行う必要があります。この期限を過ぎると、過料が科される可能性があるので注意が必要です。
■相続登記に必要な主な書類は以下の通りです。
書類名 | 取得先 | 備考 |
---|---|---|
戸籍謄本 | 被相続人の本籍地の市区町村役場 | 被相続人の出生から死亡までのもの |
相続人の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の市区町村役場 | 相続人全員分が必要 |
被相続人の除籍謄本 | 被相続人の本籍地の市区町村役場 | 被相続人が死亡している場合 |
遺産分割協議書 | 相続人間で作成 | 相続人全員の実印押印と印鑑証明書が必要 |
不動産登記簿謄本 | 法務局 | 相続対象の不動産全ての分 |
固定資産評価証明書 | 不動産所在地の市区町村役場 | 相続税の計算に必要 |
名義変更の注意点
相続登記の期限
2024年4月1日以降、相続登記は被相続人の死亡を知った日から3年以内に行うことが法律で義務付けられます。
■法務局HP-相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ(登記手続ハンドブック)
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000001_00014.html
相続税
不動産の名義変更は、相続税の申告・納付とは別の手続きですが、密接に関連しています。相続税の申告期限は被相続人の死亡を知った日から10ヶ月以内ですが、名義変更はそれよりも長い期間が設けられています。
相続登記費用
相続登記には費用がかかります。
- 登録免許税 :不動産評価額の0.4%
- 司法書士報酬:5万円〜20万円程度
- 証明書取得費用:1万円〜3万円程度
これらの費用は、相続財産から支払うことが一般的です。
名義変更後の手続き
不動産の名義変更が完了したら、別で行う手続きがありますので注意しましょう。
- 固定資産税の納税者変更手続き(市区町村の税務課)
- 水道・ガス・電気の契約者変更
- 火災保険の契約者変更
- 住宅ローンがある場合は金融機関への届出
相続した不動産の売却方法
相続した不動産を売却する際には、正しい流れで手続きすることで、スムーズに売却することができます。不動産の査定から売却契約までの流れを解説します。
不動産の査定と価格設定
査定方法の種類
- 机上査定:オンラインツールや過去のデータを基に行う簡易的な査定
- 訪問査定:不動産業者が実際に物件を訪問して行う詳細な査定
- 一括査定:複数の不動産業者に同時に査定を依頼する方法
■価格に影響する要因
要因 | 具体例 |
---|---|
立地条件 | 最寄り駅からの距離、周辺の商業施設、学校の有無 |
建物の状態 | 築年数、耐震性能、リフォーム履歴 |
法的規制 | 用途地域、建ぺい率、容積率 |
市場動向 | 地域の不動産相場、経済状況 |
不動産会社の選び方
不動産会社を選ぶ際は、信頼できる不動産会社を選びましょう。
そのうえでポイントをいくつかご紹介します。
不動産会社選びのポイント
- 実績と経験:相続不動産の取り扱い経験が豊富か
- 専門知識:相続税や法律に関する知識を持っているか
- 対応の丁寧さ:質問や相談に親身に答えてくれるか
仲介手数料の確認
不動産会社に支払う仲介手数料は売却価格によって法律で上限が定められています。標準的な仲介手数料は以下の通りです。
■売却価格と仲介手数料率
売却価格 | 仲介手数料率 |
---|---|
200万円以下 | 5.5% |
200万円超~400万円以下 | 4.4% |
400万円超 | 3.3% |
売却契約のポイント
契約書の重要事項
売買契約書をしっかりと確認しましょう。
- 物件の所在地と面積
- 売買価格と支払方法
- 引き渡し日
- 瑕疵担保責任の範囲
- 契約解除の条件
- 固定資産税などの精算方法
引き渡しまでの流れ
- 売買契約の締結と手付金の授受
- 買主による住宅ローンの手続き(必要な場合)
- 残代金の支払い
- 所有権移転登記
- 物件の引き渡し
まとめ
今回の記事では、不動産相続の手続きについてまとめました。
不動産相続の手続きをおこなう前に不動産相続について理解を深めていく必要があります。 相続人の確認方法や名義変更手続きなど細かく解説しましたので、対象となる方は不動産相続の概要的な内容の理解を深めて、売却するタイミングで焦らない環境を整えておきましょう。